2021年度の出題区分表について
2021年4月1日から「収益認識に関する会計基準」「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、「収益認識基準」とします)の適用が開始され、売上計上に関する考え方・処理方法が大きく変わりました。
日商簿記検定の収益認識基準の取り扱いに関しては、以下の2点がすでに明言されていました。
- 収益認識基準は2022年度(2022年4月~)の試験から適用する。
- 収益認識基準の適用により影響を受ける処理は2021年度の試験では出題しない。
2021年3月19日、試験の主催団体である日本商工会議所が「2021年度の簿記検定試験に適用する出題区分表…について」という記事で、2021年度の試験で出題しない処理を改めて明示するとともに、その他の改定を盛り込んだ2021年度の出題区分表を公開しました。
本ページでは、その出題区分表から各級の「主な変更点」をピックアップしてご紹介いたします。
簿記3級の変更点
2020年度までは、商品販売時に当社が負担すべき送料を支払った場合は発送費などで費用処理し、得意先が負担すべき送料を立て替えて支払った場合は立替金または売掛金で処理していました。
- 当社負担の送料を支払った場合:発送費などで費用処理
- 得意先負担の送料を支払った場合:立替金または売掛金で処理
収益認識基準の適用により、今までのように簡単に分類することができなくなったため、2021年度以降の簿記3級試験では当社が負担すべき送料を支払った時の処理のみが出題されることになりました。
なお、得意先が負担すべき送料を立て替えて支払った時の処理については、2022年度から1級の試験範囲になる予定です。
- 当社負担の送料を支払った場合:発送費などで費用処理
- 得意先負担の送料を支払った場合:立替金または売掛金で処理
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
従来、商品販売にともない売手が送料を支払った場合には、送料について売手の負担(売手にとって費用)とする処理と、買手の負担(売手にとって売掛金または立替金)とする処理の2つの方法が出題されていた。しかし、本基準等において売手が送料を支払うなど商品の出荷及び配送にかかわる場合は、その出荷及び配送活動について、①商品を移転する契約を履行するための活動に該当するため履行義務として識別しないのか、それとも商品の移転とは別に履行義務として識別されるのか、②履行義務として認識される場合に出荷・配送活動が本人としての履行義務と代理人としての履行義務のどちらに該当するのか、③原則として出荷・配送活動を履行義務として識別すべき場合でも、これを識別しない容認規定を適用するのか、ということを踏まえ処理を選択しなければならないと考えられる。そして、このような概念の理解や処理の区別を3級で出題するには難易度が高すぎるといえる。
2022年度以降の出題にあたり複数の履行義務を含む顧客との契約は、簡易な内容を除き1級での出題を暫定的に予定していることから、今後の3級および2級の出題にあたっては、出荷・配送活動を履行義務として識別しない方法のみを出題する。すなわち、売手が支払う送料を買手に請求し、これを売手が売掛金または立替金とする処理は、本基準等において売手による出荷・配送活動が代理人取引に該当する場合に採られるものであると考えられるため2021年度の出題を見送り、2022年度以降は1級の出題範囲とする。そして、基本的に3級および2級で売手が支払う送料は、売手の費用として処理する出題をする。
近年の本試験では、分記法により商品売買取引を処理する問題がほとんど出題されていないことから、今回の改定にあたって、受験生の負担を軽減するために簿記3級の試験範囲から削除されました。
また、分記法による処理の削除にともない「商品売買益(※勘定科目)」も試験範囲から削除されました。
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
分記法は帳簿への記帳方法であり本基準等の適用によりなくなるものではないが、近年は分記法の出題をほとんど行っていない。また、帳簿と財務諸表との連携および消費税の課税売上を集計する目的で、帳簿上でも売上を記録する必要性が高い。そのため、2019年度から適用の出題区分表改定時には分記法の削除を見送ったが、出題区分表に複数の処理方法が含まれることによる3級受験者の負担を軽減するため、今回の改定に際して削除した。なお、固定資産などの売買取引は今後も基本的に分記法と同様の処理で出題する。また、今回の分記法の削除は簿記検定受験者の負担の軽減を考慮したものであり、特に簿記の導入教育において資産の動きと帳簿の記録が一致する分記法の指導を否定するものではないことに留意されたい。
- 得意先負担の送料を立て替えて支払う処理は出題されない。
- 分記法による商品売買の処理は出題されない。
簿記2級の変更点
2020年度までは、商品販売時に当社が負担すべき送料を支払った場合は発送費などで費用処理し、得意先が負担すべき送料を立て替えて支払った場合は立替金または売掛金で処理していました。
- 当社負担の送料を支払った場合:発送費などで費用処理
- 得意先負担の送料を支払った場合:立替金または売掛金で処理
収益認識基準の適用により、今までのように簡単に分類することができなくなったため、2021年度以降の簿記2級試験では当社が負担すべき送料を支払った時の処理のみが出題されることになりました。
なお、得意先が負担すべき送料を立て替えて支払った時の処理については、2022年度から1級の試験範囲になる予定です。
- 当社負担の送料を支払った場合:発送費などで費用処理
- 得意先負担の送料を支払った場合:立替金または売掛金で処理
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
従来、商品販売にともない売手が送料を支払った場合には、送料について売手の負担(売手にとって費用)とする処理と、買手の負担(売手にとって売掛金または立替金)とする処理の2つの方法が出題されていた。しかし、本基準等において売手が送料を支払うなど商品の出荷及び配送にかかわる場合は、その出荷及び配送活動について、①商品を移転する契約を履行するための活動に該当するため履行義務として識別しないのか、それとも商品の移転とは別に履行義務として識別されるのか、②履行義務として認識される場合に出荷・配送活動が本人としての履行義務と代理人としての履行義務のどちらに該当するのか、③原則として出荷・配送活動を履行義務として識別すべき場合でも、これを識別しない容認規定を適用するのか、ということを踏まえ処理を選択しなければならないと考えられる。そして、このような概念の理解や処理の区別を3級で出題するには難易度が高すぎるといえる。
2022年度以降の出題にあたり複数の履行義務を含む顧客との契約は、簡易な内容を除き1級での出題を暫定的に予定していることから、今後の3級および2級の出題にあたっては、出荷・配送活動を履行義務として識別しない方法のみを出題する。すなわち、売手が支払う送料を買手に請求し、これを売手が売掛金または立替金とする処理は、本基準等において売手による出荷・配送活動が代理人取引に該当する場合に採られるものであると考えられるため2021年度の出題を見送り、2022年度以降は1級の出題範囲とする。そして、基本的に3級および2級で売手が支払う送料は、売手の費用として処理する出題をする。
近年の本試験では、分記法により商品売買取引を処理する問題がほとんど出題されていないことから、今回の改定にあたって、受験生の負担を軽減するために簿記2級の試験範囲から削除されました。
また、分記法による処理の削除にともない「商品売買益(※勘定科目)」も試験範囲から削除されました。
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
分記法は帳簿への記帳方法であり本基準等の適用によりなくなるものではないが、近年は分記法の出題をほとんど行っていない。また、帳簿と財務諸表との連携および消費税の課税売上を集計する目的で、帳簿上でも売上を記録する必要性が高い。そのため、2019年度から適用の出題区分表改定時には分記法の削除を見送ったが、出題区分表に複数の処理方法が含まれることによる3級受験者の負担を軽減するため、今回の改定に際して削除した。なお、固定資産などの売買取引は今後も基本的に分記法と同様の処理で出題する。また、今回の分記法の削除は簿記検定受験者の負担の軽減を考慮したものであり、特に簿記の導入教育において資産の動きと帳簿の記録が一致する分記法の指導を否定するものではないことに留意されたい。
収益認識基準の適用により、売上割戻は変動対価として取り扱われることになったため、売上割戻は簿記2級の試験範囲から削除されました。
また、売上割戻の削除にともない売上割戻引当金に関する処理も簿記2級の試験範囲から削除されました。
なお、仕入割戻は削除されずに試験範囲に残ります。混同しなように気をつけてください。
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
本基準等により、売上割戻は変動対価として扱われ引当金の計上を行わないため、削除した。なお、売上割戻の取引について 2021年度の出題は見送るが、2022年度以降は2022年度適用予定の暫定版出題区分表における2級「10.様々な財又はサービスの顧客への移転」の「キ.変動対価※」に含まれるため、留意されたい。
- 得意先負担の送料を立て替えて支払う処理は出題されない。(※3級の変更点)
- 分記法による商品売買の処理は出題されない。(※3級の変更点)
- 売上割戻・売上割戻引当金に関する処理は出題されない。
- 売上割引に関する処理は出題されない。
- 消費税の税込方式の処理は出題されない。
- 作業屑に関する処理は出題されない。
簿記1級の変更点
2020年度までは、商品販売時に当社が負担すべき送料を支払った場合は発送費などで費用処理し、得意先が負担すべき送料を立て替えて支払った場合は立替金または売掛金で処理していました。
- 当社負担の送料を支払った場合:発送費などで費用処理
- 得意先負担の送料を支払った場合:立替金または売掛金で処理
収益認識基準の適用により、今までのように簡単に分類することができなくなったため、2021年度の簿記1級試験では当社が負担すべき送料を支払った時の処理のみが出題されることになりました。
- 当社負担の送料を支払った場合:発送費などで費用処理
- 得意先負担の送料を支払った場合:立替金または売掛金で処理
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
従来、商品販売にともない売手が送料を支払った場合には、送料について売手の負担(売手にとって費用)とする処理と、買手の負担(売手にとって売掛金または立替金)とする処理の2つの方法が出題されていた。しかし、本基準等において売手が送料を支払うなど商品の出荷及び配送にかかわる場合は、その出荷及び配送活動について、①商品を移転する契約を履行するための活動に該当するため履行義務として識別しないのか、それとも商品の移転とは別に履行義務として識別されるのか、②履行義務として認識される場合に出荷・配送活動が本人としての履行義務と代理人としての履行義務のどちらに該当するのか、③原則として出荷・配送活動を履行義務として識別すべき場合でも、これを識別しない容認規定を適用するのか、ということを踏まえ処理を選択しなければならないと考えられる。そして、このような概念の理解や処理の区別を3級で出題するには難易度が高すぎるといえる。
2022年度以降の出題にあたり複数の履行義務を含む顧客との契約は、簡易な内容を除き1級での出題を暫定的に予定していることから、今後の3級および2級の出題にあたっては、出荷・配送活動を履行義務として識別しない方法のみを出題する。すなわち、売手が支払う送料を買手に請求し、これを売手が売掛金または立替金とする処理は、本基準等において売手による出荷・配送活動が代理人取引に該当する場合に採られるものであると考えられるため2021年度の出題を見送り、2022年度以降は1級の出題範囲とする。そして、基本的に3級および2級で売手が支払う送料は、売手の費用として処理する出題をする。
近年の本試験では、分記法により商品売買取引を処理する問題がほとんど出題されていないことから、今回の改定にあたって、受験生の負担を軽減するために簿記1級の試験範囲から削除されました。
また、分記法による処理の削除にともない「商品売買益(※勘定科目)」も試験範囲から削除されました。
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
分記法は帳簿への記帳方法であり本基準等の適用によりなくなるものではないが、近年は分記法の出題をほとんど行っていない。また、帳簿と財務諸表との連携および消費税の課税売上を集計する目的で、帳簿上でも売上を記録する必要性が高い。そのため、2019年度から適用の出題区分表改定時には分記法の削除を見送ったが、出題区分表に複数の処理方法が含まれることによる3級受験者の負担を軽減するため、今回の改定に際して削除した。なお、固定資産などの売買取引は今後も基本的に分記法と同様の処理で出題する。また、今回の分記法の削除は簿記検定受験者の負担の軽減を考慮したものであり、特に簿記の導入教育において資産の動きと帳簿の記録が一致する分記法の指導を否定するものではないことに留意されたい。
収益認識基準の適用により、売上割戻は変動対価として取り扱われることになったため、売上割戻は簿記1級の試験範囲から削除されました。
また、売上割戻の削除にともない売上割戻引当金に関する処理も簿記1級の試験範囲から削除されました。
なお、仕入割戻は削除されずに試験範囲に残ります。混同しなように気をつけてください。
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
本基準等により、売上割戻は変動対価として扱われ引当金の計上を行わないため、削除した。なお、売上割戻の取引について 2021年度の出題は見送るが、2022年度以降は2022年度適用予定の暫定版出題区分表における2級「10.様々な財又はサービスの顧客への移転」の「キ.変動対価※」に含まれるため、留意されたい。
外貨建取引の荷為替取引に関する一部の処理が収益認識基準の適用対象になる可能性があるため、荷為替取引に関する処理は簿記1級の試験範囲からいったん削除されました。
なお、通常の外貨建取引は今までどおり出題されます。混同しなように気をつけてください。
引用:日本商工会議所の配布資料「改定項目等の説明」の該当部分の説明
外貨建取引の荷為替取引は主に輸出取引に関連する出題を想定しているが、本基準等にもとづく輸出取引の収益認識では危険負担などの取引条件を考慮する必要がある。そこで、取引条件によっては本基準等により処理等が変更となる可能性があることから、2021年度に限り出題対象としないこととした。
なお2級以上の範囲として記載されている「ア.外貨建の営業取引」は2021年度も出題対象とするが、輸出取引について危険負担等にもとづく収益認識時点の判断は求めず、従来どおり主に通常の商品売買に準じた外貨建取引を出題する。
- 得意先負担の送料を立て替えて支払う処理は出題されない。(※3級の変更点)
- 分記法による商品売買の処理は出題されない。(※3級の変更点)
- 売上割戻・売上割戻引当金に関する処理は出題されない。(※2級の変更点)
- 売上割引に関する処理は出題されない。(※2級の変更点)
- 消費税の税込方式の処理は出題されない。(※2級の変更点)
- 作業屑に関する処理は出題されない。(※2級の変更点)
- 工事契約に関する処理は出題されない。
- 荷為替取引に関する処理は出題されない。
- 材料の有償支給に関する処理は出題されない。
まとめ
2021年度の出題区分表が2021年3月19日に公表されたため、それ以前に制作・発売していた教材の中には(2021年度対応版であっても)2021年度の試験で出題されない論点が掲載されている場合があります。
2021年度中に日商簿記検定を受験予定の方は、出版社の公式サイトで出題区分の改定に対応する「レジュメ」などが公開されていないかご確認ください。参考までに、TAC出版が現在公開している改正対応レジュメをご紹介します。
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